北アルプス 北穂高岳・滝谷クラック尾根登攀

(もうすぐ小屋が・・・)


北穂高岳・滝谷クラック尾根登攀
期 日 :7月28日~8月2日
メンバー:L ハル、ピーちゃん
  
 北穂高岳西面、滝谷は「鳥も通わぬ」と形容され、我々にとって憧れの岩場だ。しかし1998年の群発地震で滝谷は素晴らしいルートがいくつも影響を受けた。また岩場が西面に向いていると言う事で気象条件が厳しく、夏でも低温には十分注意が必要だ。

7月30日(火)北穂高小屋11:50・・B沢入口(偵察)・・北穂高小屋13:00
 昨日は横尾から南稜を登り北穂高小屋に入った。何時もの様に誰にでも温かく迎えてくれる山頂の山小屋は最高だ。朝、小屋の裏側から滝谷を覗くが冷たい風とガスが舞い上がっていた。天気もまだ夏山の気候にはなっていなく不安定だ。少し様子を見るが今日は無理と判断し停滞とする。
 お昼頃、B沢入口付近まで偵察に行く。B沢に一歩踏み込むと足元から岩くずが流れ落ちる。無理をせずB沢の雰囲気を感じ取り戻る。

7月31日(水)北穂高小屋7:10・・B沢入口7:30・・戻る9:20・・B沢入口10:30・・北穂高小屋12:00
 だいぶ天気が安定したので、意気込み進むがB沢の雰囲気に飲み込まれ、そんなに下っていないのに、だいぶ下降したと思い込みフィックスロープを見過ごしたと勘違いしてしまった。ここからフィックスロープを確認しながら戻ったが、結局見つからずダラダラと小屋に戻る。小屋で確認したところ、もう少し下の方ではないかとの事。残念。

8月1日(木)北穂高小屋6:15・・B沢入口6:35・・フィックスロープ7:50・・
       クラック尾根取り付き9:20・・北穂高小屋14:40
 小屋の支配人さんのアドバイスを受け今度こそはと気合が入る。今シーズンたぶん我々が3パーティ目だそうだ。B沢下降もだいぶ慣れ順調に下る。昨日戻った所から10分程で左手にフィックスロープを確認する。その上からは足元の岩がもろいのでここからロープを結ぶ。
結んだ時点で相手を信用し、自分の力をすべて相手の為に使う。
 通常、ここから懸垂下降し崩壊バンドの右端に着地して、少し登った所がクラック尾根取り付きになるが、我々はアドバイス通りに懸垂下降をせず、そのまま右上し回り込むと取り付き点に合流した。こちらも一部岩がもろい所がある。
 1P目:(フェースから凹角そしてⅤ級垂壁)ピーちゃんがリード。通常は凹角上でピッチを切るのだが勢い余ってⅤ級の壁まで登ってしまった。
 2P目:(リッジⅢ級)ハルがリード。リッジ状を登りピナクル手前でピッチを切る。何となく岩場がもろい。
 3P目:(ピナクルから旧メガネのコルへⅢ級)ピーちゃんがリード。ピナクルは右から登り、旧メガネのコルへ。コル周辺非常にもろい。
 4P目:(フェースから凹角Ⅳ級)はるがリード。グレードはⅢ級になっているが、右端を登った感覚としてはⅣ級に感じた。ここも部分的に苔がありまたホールドに草が生えていた。
 5P目:(ジャンケンクラック右Ⅳ+級)ピーちゃんがリード。このルートのメインピッチ。
 6P目:(フェースから脆い凹角Ⅲ級)ハルがリード。フェースの右上に捨てカラビナが有り、そちらに引き込まれそうになるがフェースを左上しリッジを回り込むと凹角状のガレ場に出る。
 7P目(ガレ場Ⅲ級)ピーちゃんがリード。ガレ場を詰めチョクストーンを左から巻く。
そこから大テラスまでは同時登攀(歩き)。
 8P目:(凹角Ⅲ~Ⅳ級)ハルがリード。右上に捨て縄が有るがルートと若干違うと思いやや左上を登る。ハーケン3本で確保。支配人さんが上から「お疲れさん」と声をかけてくれた。我々を心配していただき嬉しかった。そしてアドバイス通りにコース取りが出来て良かった。
 9P目:(フェースから凹角Ⅲ~Ⅳ級)ピーちゃんがリード。最後スッキリした岩場で終了。
 終了地点から10歩ほどで小屋のテラスに出るので注目の的になってしまう。嬉しいやら恥ずかしやらで変な気持ちだ。でも二人とも自身の不安を抑え、そして乗り越えて滝谷を登った事に満足感でいっぱいだ。
 その40分ほど後には我々のトレースを消すかのようにザァーと雨が降り出した。これからも不安を押し殺して、新しい目標に向かって一歩進もう。明日は上高地に下るのみ。
(記 ハル)


 今年の夏山のメインがこのクラック尾根だ!しかし、それでなくても不安が先になってしまう滝谷なのに歩きも岩トレも練習不足で気持ちが落ち込む…2日間テラスで待機をしていたが、気が付くと眉毛がㇵの字になっている。そして“ハ~~”とため息が…
アタック日、前日の偵察で少しは余裕があるがフィックスロープの上のトラバースが悪くまた不安になったが、取付きで支度をしながらロープを結んだ時には気合を入れ直しました!しかし途中、ピッチを切るのにウロウロしたりでメインのジャンケンクラックに着いた時には肩で息をしている…ハルさんの“ちょっと休憩~”の声でゴロンと横になり寝ながらクラックを見ているとハルさんがクラックの説明をしながら“大丈夫だから行った方が良いよ”と…“何だか寝ながら見てたらクラックも寝て見えてきた~”と言いながら何時もこの手に引っかかってしまうのだ💦その後は大テラスから小屋直下に出るバンドのルートファインディングをハルさんにして頂き、最終ピッチは支配人さんお勧めの“楽しめる”直上ルートで小屋の横に出た。確保でロープを引いていると支配人さんがいらしたり、テラスに居た人が見に来たりで恥ずかしいけれどチョット嬉しかった…
ハルさんは不安な私以上の物があったと思いますが、それを出さずに今回も貴重な経験をさせて頂きました。ありがとうございました。
私も少しでも次の人に出来る様になれるかな…
(記 ピーちゃん)

 

(写真 ピーちゃん)

2019年08月02日