明神岳東稜

明神岳と前穂高岳

明神岳東稜

山 域:北アルプス 明神岳・前穂高岳・奥穂高岳
期 日:7月20日~25日
参加者:L ハル ぴーちゃん

リハビリコンビ、明神岳東稜を這い登る
7月21日(金)
 明神橋から荷重に耐え、下宮川谷を渡り右の小さな枝沢を進む。この先ガレ場になりルートが分かりずらい。ルートからあまりズレない様に注意しながら進む。
 宮川尾根に上がり、左側の尾根末端に沿って進んでいくと幾つかの慰霊碑を通過する。
困難に向かってチャレンジした諸先輩に敬意を表したいと思います。だからこそ私たちは安全登山を心がけていかなければと思います。
 幾つかのガレ場を過ぎやっとヒョウタン池にたどり着く。青空に向かって大きく手を広げた様な岳樺が力強い。池ではオタマジャクシが気持ち良さそうに波紋を描いていた。
リハビリコンビの1日目は此処でも良かったのかも、と思いながらハーネス等、装着する。
 樹林帯を登っていくと徐々に草付きの斜面になり傾斜もそれなりに強くなってきた。ネットで調べると皆さんはそのまま登っている様だがリハビリコンビはこの先、明神岳主峰近くまでロープを使用する。時間がかかるのは仕方ない。その分、頑張ろう。
 所々、ルートが分かりにくくなるが、その先の傾斜などを見ると何となくルートが見えてくる。一カ所えぐられた様になっているところがありルートが分かりずらいが、よく見ると左側から巻きながら上に行けそうだ。小枝を束ねロープをクリップしそこをクリア。今までわりと単調な登りだったので気持ち良く登った。その先も草付きに隠された足場を気を付けながら登って行くが、そろそろ今日の寝床を見つけなければ。
小さな凹角を抜けると傾斜が緩くなり、そこにツエルトを張る。潜り込むと底は傾斜があり、ずり落ちそうになるがランタンの灯りをともすとそこは天国。明日もビバークになるだろう。水の量を気にかけながら軽く一杯、最高だ!!いつの間にかツエルトの上では星が輝いていた。
7月22日(土)
 ラクダのコルを目指して頑張る。昨日から少し気になっている事があり、それが何なのかやっとわかった。這松帯を通過するたびに煙のようなものが舞い上がっていたが、それは這松の花粉だった。ザックの上にびっしりと緑色の花粉が付いていた。その為か今でも鼻水が止まらず、時々咳もするようになってしまった。
 やっと小ピークにたどり着く。これで這松花粉ともおさらばだ。明神岳主峰が大きく素晴らしい。バットレスは3ピッチの登攀だ。1P目は4~5m程。2P目は上部が凹角状になっているが、出口付近の岩が崩れ落ち、その後も岩が落ちたとの情報もあり、これからの行動時間を考えればリハビリコンビには無理かも、ただ左からのルートも厳しそうだが、左側を登る事にする。スタートは怪しげなフイックスロープで下降し凹角状を登るが見た目より登り易かった。最後の3P目はスッキリした岩場で終了。相方には水を持ってもらい大変だったと思うが黙々と登ってきた。ロープを結んだ時点でお互い、相手の為に頑張ると言う暗黙のルールがある。
 バットレス終了点からは山頂左側の稜線に向かって登ると、やっと稜線に出、その先が主峰だった。
静かな山頂だ。相方の膝はだいぶダメージがきている様だ。足首も痛そうだ。何しろ骨切手術をしたので無理もない。ただ此処に来るためトレーニングをしてきたので、もう少し頑張ろう。私の方は膝に違和感があるがまだ大丈夫。
 山頂から細い岩稜を少し進み1回目の懸垂下降でやや広い所に降りる。そのまま進んで行くとフイックスロープがありそれに沿って易しい岩稜を降りていく。そのロープの終了点から懸垂下降で奥明神沢のコルに降り立つ。昔、春の合宿でT君と東稜からこの沢を降り岳沢のベースに潜り込んだことを思い出す。
 この先、偵察で私がガレ場を登っていくとテント場があり一安心。ゆっくり戻って行くと下から笛の音、帰りが遅いので心配して鳴らしたかと思い「テント場、見つけた」と大声で返したら、今度は「熊~」との返事。慌てて笛を取り出し鳴らしながら相方の所に行くと、上高地側の小さな沢にお尻をこちらに向けて食事中。笛を鳴らしたり手をたたいたりしたが無視される。後ろ姿しか確認できなかったが見た感じ、性格の良さそうな、おとなしい熊に見えた。そこから静かに我々は離れた。
 ツエルトを張る。底が平なのでより楽しい。明日の行動の水を確保し、軽く夕食。今日の一杯も美味い。
7月23日(日)
 今日も良い天気だ。小岩峰は岳沢側から巻く、とルート図に書かれていたので左側を確認しながら登って行くと、それらしき踏み跡を見つける。ケルンは無し。進んで行くと此処で良いかな~という場所が何回かあつた。そのうち2回ほどザックを置いてその先を偵察した。そんな事をしながら進んで行くとやっとケルンが有り、ルートが間違っていない事を確認する。ここは稜線を行くコースとトラバース道の分岐の様だ。前穂から明神に向かう場合はケルンがややトラバース道側にあるので自然とトラバース道に入ると思われる。
気持ち的にはずいぶん楽になる。足を進めていくと前穂手前の道標が見えてくる。山頂から人の声も聞こえる。二人だけの世界から急に大都会に入った感じだ。やっと前穂高岳に立った。前に来た時は北尾根からだった。懐かしい。
 登山者が多い。それだけコロナが落ち着いてきたのだろう。紀美子平で休んでいたら救助ヘリが上空でホバリング、若い二人がヘリに向かって大きく手を振っていたら相方が「救助ヘリなのであまり手は振らない方が良いと思いますよ」と一言。
 吊尾根から奥穂高岳に向かう。予定では北穂高小屋だがこのペースだと無理なので早めに小屋に連絡を入れる。奥穂高岳の山頂を踏み穂高岳山荘手前の鎖場を慎重に下り、やっと山荘のテント場に着いた。
 最初は予約が取れれば小屋泊でも良いかと思ったが、あまりの賑やかさで、今までの静けさのギャップが大きすぎ、その雰囲気についていけず最初の予定通りテント泊にする。
 ツエルトを張り、くつろいでいると同年輩のグループの皆さんが懐かしそうにツエルトを見ながら通過して行った。
7月24日(月)
 テント場を出発する時は、周りのテントは一つも無かった。私達も気合を入れて行きましょう。やや急なザイテングラードを降りるが登山道はしっかり整備をされている。末端から大きくトラバースをし、涸沢に降り立つ。見慣れた風景に癒される。
 膝が壊れないようにゆっくり下りる。今までと違い水は豊富にある。本谷橋を渡り屏風岩を見ながら横尾に到着。最初、徳沢も良いかな~、なんて言っていたが膝が音を上げていたので此処までとする。一番良さそうな場所にツエルトを張る。
 早速、横尾山荘の休憩室で乾杯。ラーメンとうどんが美味い。幸せ満開。テント場に戻り静かに二次会。真っ平らなテント場で熟睡。
7月25日(火)
 サクサクとツエルトをたたみ出発。上高地までの慣れた道なので足取りも軽く・・と、いきたいところだが二人とも足が重たい。というか膝の曲り角度が小さい。でも上高地までなので頑張ろう。明神岳の稜線が見えてくる。
這いずりながらの登った明神岳、沢山の思い出、ありがとう!!
(記 ハル)

7月20日
12時に上高地に到着。食堂で昼食をとり、不要な荷物を預かり所に預け13時に出発。
今日は明神までなので、ゆっくりと花を見ながら歩いていたら、半分程で1時間かかってしまい少し急いだ。
明神館で受け付けを済ませた後、登山口の偵察に行きました。
板で出来た橋を2か所渡り踏み跡も明瞭なので戻る途中、枝を拾い最初に渡った橋の泥の所にひいてきた。
21日
4:45出発。下宮川谷辺りまではガレガレだが、右の枝沢を入ってからが凄かった(-_-;)
細くえぐられた沢沿いを藪と戦いながら宮川のコルまで。
途中、少しルートファインディングが難しい所も有ったが11:45ひょうたん池に着いた。
何年か前に一人で来たが、良く来れたなと思いました。
休憩と装備を付けて12:30出発。
第一階段の取り付きに13:50に着く。ここまでも藪漕ぎだ。
第一階段は階段状の草付きで手も足元も心もとなく全てロープを出したので時間がかかってしまいました。
ハルさんがハイマツの風除けも有り腰までの草をならすと平になったビバーグの適地を見つけてくださり、暗くなり始めた19:00にツエルトにもぐりこむ。
22日
5:50朝露で濡れていたので雨具のズボンだけを穿き出発。
8:40ラクダのコルから見るバットレスがカッコイイ!
最初は数メートルの岩場だが、ここからロープを出した。2ピッチ目は登ると気持ちの良さそうな岩だが、上部が崩壊しているとの情報が有り巻く事にした。
情報通りに古いロープがフィックスして有り、3m程降りてから左にトラバースするのだが、確保して頂いてるにもかかわらずフィックスロープを離すのに少し勇気を入れた。
草付きの心もとない階段状を登り、スラブに着いた。
2日間藪漕ぎ、草付きの中で唯一のスラブだ。
ハルさんはアプローチシューズのままだったが、私はクライミングシューズに履き替えた。
やっぱり乾いた壁は気持ちが良かったです。
我々は13:30に着いた明神岳主峰までロープを付けたまま登りました。
山頂からは狭い稜線を少し進み、捨て縄を使って懸垂下降で下りた。
16:302回目の懸垂下降で奥明神沢のコルに降りて、ハルさんが空身でテン場を探しに行って頂いていると、視界の隅で黒い物が動いた…15m程の所に熊だ❕一人で声も出せず岩陰に隠れ、近くに有ったフィックスロープで3m位よじ登り身を潜めていると、コルの反対側から「テン場あったよ~」と声がかかり「熊―‼」と叫び、その後は笛を吹いたり叫んだりしたが、こちらを見もせずズ~~と草をハムハムしている…
あまりにも動かずハムハムハムハムしているので、お互いにコルに下りテン場に向かった。
チラッとこちらを見ただけで、気立ての良いクマさんでした(;^_^A
コルから15分位登った所に岩で沢からの風除けの有るテン場に17:10に着いた。
23日
5:30出発。
前穂高岳の手前の小岩峰は岳沢側を巻くのだが気の抜けない岩場が続き、たまに有るケルンに胸をなでおろす。
前穂高岳の山頂直下で登山道に出た。ザックをデポして8:00前穂高岳登頂。
8:25紀美子平で休憩をしていると救助のヘリコプターが飛んできて奥穂高岳周辺を飛び回っている。奥穂高岳に向かっていると吊り尾根で救助をされているのが見えた。
すれ違った方の話によると、お互いに歩きながらすれ違い、谷側を歩いた方の足元の岩が崩れたとの事でした。
気を引き締め直し奥穂高岳に向かうが、水と食料を最小限にしてテン泊用具と水を担いでの登攀、登山道に出たのでギアもザックの中だ…。背中が重い…足が出ない…。
通常のコースタイムなら目的地の北穂高岳まで行けるのだが、このペースでは遅くなってしまう。昨年の滝谷第四尾根に引き続きご心配をおかけするわけにはいかないので、南稜の頭でキャンセルの連絡をした。快く対応して頂き、毎年お世話になっているので、今年また計画しますと伝えて電話をきった。
13:10やっと奥穂高岳。14:30穂高岳山荘に着く。
24日
6:00朝の柔らかい陽を浴びて涸沢を目指した。
9:10涸沢ヒュッテに到着。途中、山岳補導所で奥明神沢の熊情報はいるのかと伺ったところ登山道では無いので大丈夫との事でした。
12:05本谷橋。13:50野営場が学生達で賑わう横尾に着いた。
ハルさんに教わりながらツエルトを張っていると、珍しそうに見ている方がいる。横尾のご主人にその事を話すと、ツエルトに対応出来る人が減ってきていると事。
今回はツエルトで4泊して、使い勝手の良さを感じました。
25日
5:50横尾を出る。7:00徳沢、「春合宿でここら辺にテントを張ったんだよ」と聞きながら休憩。明神岳東稜と前穂高岳の稜線を感慨深く見ながら8:20ぐるっとして来た出発点の明神に到着。9:20上高地に着いた。
昨年10月に膝の手術をして11月末の退院後、ハルさんには、リハビリ登山にお付き合い頂き何とかここまでこられました。今回も計画からツエルト一式やロープも持って頂き、allリードも…本当にありがとうございました。
今回はリハビリバリエーションでリハバリかな?
 (記 ぴーちゃん)

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2023年07月25日